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幻想小悦 「香りの夢物語」第一章 調香師という家系に生まれて 2

(この物語は、フィクションですが現実の調香の世界のあり方を元につくられてます。物語の中には、よく似た企業などの名称が出てきますが、あくまで想像の産物であり、現実との関係は読者の判断に委ねてあります。)
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 香りというものが、精神や心と何か結びついていることは、そういうような環境で育っていったのでなんとなくわかっていました。父は、香りを作るときにとても長い時間、お客さんと話し込んでいましたし、時にはまるで占いや人生相談のような形をとることもありました。

 モスお爺さんが、中東から貰ってきたという謎のパピルスには、調香と心の関係が詳しく書かれていたということですが、子供の頃からそれらしい本があることはわかっていましたが、僕自身一度も見たことはありませんでした。

 もっと昔には、一度それを盗もうとして泥棒が入ったようですが、それ以来家族をも知らない場所にそれが隠してあるのではと、僕は時々想像したりしています。

 「単に混ぜるだけでなら、誰でも少しやればわかってくるよ。でも、それがどう心や精神に影響してくるかがわからないと何もならない。」

 父は、時々最近街に出来たあちこちの調香の店を例えてはそう話していました。昔と違って、香料は手に入りやすくなりましたし、手軽で安い香水は庶民の町では、まだまだ人気があるようです。

 父は、また香りと夢については、ひときわこだわって話しているようでした。新しく香りをつくった人には、必ずその日の夜に何の夢を見たかを電話や手紙でたずねていました。その夢の内容によっては、次に入れる香料を変えるようでした。

 僕も小さい時に何日か悪夢を見たときに、父が何故かそれに気付いて、部屋にある香りを振りまいてくれました。それから良い夢を見るようになったとは言いませんが、なんだか苦しい夢は無くなったような気がしています。

 父と母の関係を話すのは、少し恥ずかしいのですが、お互い個性もあり、お世辞にも喧嘩もしないとは言いませんが、不思議な関係で結ばれていると感じるのは事実です。母は、時間があるとここからかなり山深い森に水浴びをしに行きますが、そこで運がよければ妖精を見ることが出来るとよく話しています。

 技術者の父と違って、母はどちらかというと夢想家でロマンチストです。家庭でも、見たこともない綺麗な花を摘んできては、父や僕を喜ばしたりしていました。

 母と父が結ばれたことについては、これもまた謎なことが多く、舞台女優で早くから有名であった母は多くの貴族が求愛をしていましたが、同時に華やかな生活に嫌気をさしていました。小学校で歌があまりにも上手かったために仕方がなく、舞台の学校に行きましたがそれから母、アカシアスは有名になることを望んではいないようでした。

 母の両親は、どちらも小さな農場を営んでいて、今でも遊びにいくとザル一杯のイチゴやブルーベリーを摘んできてくれたりします。決して裕福ではありませんが、そうかといって家庭に笑顔が絶えない家であったようです。

 母のお母さん、ミモザお婆さんも僕が子供のときに妖精の話をよく聞かせてくれました。妖精は、神様の使いの中でももっとも世話好きで、もっとも人に近づいていく存在であるとのことでした。でも時々僕は、そんな心優しいミモザお婆さんに意地悪な質問をしてみました。

 「悪魔がきたら、妖精はどうなってしまうの?」

 そういうと、お婆さんは少しだけ困った顔をしてきまってこういうのでした。

 「悪魔と妖精は本当は、仲の良い友達なんだよ。人が見えている前だけは避けているけど、悪魔になってしまう妖精もいれば、良いことをして妖精になったゴブリンもいるんだよ。」

 この答えは、少しだけ最初は混乱しましたが、僕自身の不安な気持ちを安心させました。僕のような悪魔を何度も見てしまうような子供は、妖精から嫌われてしまうのではとずっと思っていたので、これで何時かは僕も妖精を見ることが出来ると思うと、それだけで嬉しくなったりしました。

 僕が、初めて妖精を見た話は、また後日話しますが、感動して夜も眠れないほどでしたが、同時に僕は何故か悪魔が可愛そうになったりしました。ミモザお婆さんは、どちらも同じところから生まれてきたように言っていましたが、人間だってとても裕福で地位が高いところに生まれた人もいれば、未だに地下牢に閉じ込められて働かされている人間もいるといいます。

 僕の国では、だいぶそういった奴隷のような扱いは少なくなったのですが、それは何でも遠い日本という国の使者が来るまでは、日常で犬猫を飼うように、家の前には鎖で繋がれた人がどこの家庭にもいるものでした。神父様は、その奴隷の人たちについて、穢れているからあまり近づかないようにと言っていましたが、母などは本当は、神様はそんな残酷なことを許すはずがないとも言っていました。

 それにしても、日本というのは噂では神国と呼ばれていて、誰でも神の声を聞くことができるとのことでした。

 父は、以前何度か日本人と会ったそうで、その感覚の鋭さに度肝を抜かれたということでしたが、今でも憧れのような印象を持っているようでした。

 日本は、世界中でもっと精神性が発達した国で、人口は僅かしかしないようだけれども、殆どの人が超能力のようなものを持っていて、沢山の神様と話す場所を持っているとのことですが、僕は会ったことがないのでよくわかりません。でも、以前僕があることに気付くと先生が君は日本人のようだと言ってくれたので、多分日本人というのは何でも見えてしまう能力を持った人たちなんだなと思ったりしました。

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by fenice2 | 2010-02-14 13:23 | 香りの小説
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