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イリス(菖蒲)の香りー伝統を重んじ足元を見つめなおす香り

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 菖蒲と言うと、紫がメインですが白のほうが香りが強く、僕はいつもこちらに鼻を近づけます。

 暑いときに、菖蒲園などに行くとまるで蒸し返すような強い香りがするときがあるので、この香りには少し癖がありますが、気温が下がった雨季の時期などにいくととても甘く、百合などの香りとは似ていますが、もう少し控えめで上品な印象が残ります。

 菖蒲は、魔よけの意味があったり風呂などにいれて傷を治したり、殺菌の役割をするそうですが、香りにはもう少し違った意味があるような気がしています。これから、気候が暑くなるにつれて、気持ちまでも高ぶってしまいそうな時期に、最初は少しだけ清涼感をかもし出します。

 香りを聞く時間は、長ければ長いほど色々なことがわかってきます。僕は、自然の香りの中にこそ、人が色々想像できる元が幾らでもあるのでは思っていますが、現代はあまりにも時間と視覚にとらわれすぎてそういったイマジネーションの世界が疎かにされているような気がします。

 香りは、効能や効果だけではないです。それによって、今まで感じなかった自分の感性を開かせて何か不思議な世界に誘い出してきます。古人が、花々に妖精を見たのもあながち行き過ぎた感覚ではないように思います。

 イリスは、現代人に警告しています。あまにも急ぎ、あまりにも熱くなっていくことに何か大きな価値観を見失っていると言っているような気がします。僕も、最近あまりにも忙しい日を暮らしてくるうちに何か大切なものを見失っていったのかもしれません。

 人の情熱は、もっと感覚の深い部分から発するべきなのかもしれません。競争、日々の生活、経済的なものとの戦いそういう中で、自分から出たものが、どこかに流れていくことを感じてしまいます。

 イリスは、調香の中ではラストの香りです。ネロリやレモンなど強い柑橘系をトップにもってきても、ラストにイリスがあれば、何故か香り全体を引き締めて、優しい流れをつくってくれるような印象を残します。

 視覚の世界は、一つ一つが途切れてしまいがちですが、香りの世界は、何か他の香りと触れ合ったり、相対的な価値観をつくることで、本来の意味がわかるようになります。人間も、そうなのかもしれません。もしかしたら、魂とか精神とか心というのも、そういった相対的な中にこそ本当の価値があるのではないでしょうか。

 心が寂しくむなしく感じている人にも、イリスの香りは好意的に接してきます。もっと奥に流れている繋がりや結びつきを大切にするようにと、語りかけているようです。

 ハス(ロータス)の香りにもそれと似たようなものを感じます。夏になって、暑くなると花たちももっと雄弁になって語りかけてきます。一度少し時間があったら、その香りに触れてみてください。



 

 
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by fenice2 | 2010-06-25 10:43 | アロマ 香り
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