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心を動かされる香りを目指して

 人を好きになることも、香りを好きになることも、かなり似ているところがあるような気がしています。男性の方の香りをつくろうとするとよく、女性にもてる香りをつくってほしいといわれますが、実際にモテル香りをつくったことはありませんが、香りにそういった期待をしているのは解るような気もします。

 香りは、人の感情を動かすものがあると思いますが、それも一つの香りで誰でも同じ感情や気分にさせるのは、とても不確かな世界で、たとえばローズの香りを聞くことによって誰でも心が落ち着くというわけではないです。

 しかし、最近調香を通じて気づいてきたのですが、千差万別に感じる香りでも、ある法則に乗っ取ってつくっていけば、それほど悪い気分にはさせないのではないかということなのですが、これはその人が気に入った香料のみで香りをつくっても、本人以外の人も案外気に入ってくれる現象に少し似ています。

 その理由はよくわかりませんが、視覚にも色々な錯覚みたいなものがあって、落ち着いた気分とそうでない時にみた一枚の絵でも印象は大きく変わることがあります。そうやって考えると、日本の古来の香道などには、自分から香りに向かって精神を統一し判別していくことには、なるほど深い意味があるのでは最近よく思うようになってきました。

 自分の感情を解放させることは悪いことではないですが、酒に酔って前後不覚になる人などを見ると満更良いものではないなと思ったりします。以前も書きましたが、あまり多感で過ごす事は何も残さない生活を送ってしまうのではないかとも思います。

 人は、確かに根本的なところで好きな香りと嫌いというものはありますが、それも本来はそれほど千差万別ではないのではないのではと思います。海や山、自然の中に様々な匂いや香りの中にそれほどの好き嫌いがあるのか疑問です。

 香りの歴史だけみても本当に良い香りというのは、それほど数があるわけではないですし、小さな地域で喜ばれるものはありますが、それはあくまでその地域に住んでいるときに限ってそう感じるものも少なくないです。

 自分の好きな香りを求めていくのが良いのか、それとも本当に良い香りを理解するほうがよいのか、その答えは簡単なものではないのですが、少なくともその両方の動きがなければ、心が動くことはないのではと思っています。

 そういう意味では、僕の調香の仕事は香りを選んだり、そのやり取りをしているときにもっとも価値があるのではと考えています。勿論調香技術云々もありますが、その香りとのやり取りの中にこそ心と香りの接点が多くあるようです。そのあたりが、市販の香水のように決められたイメージにのみに沿ってつくるものとは違うのだと思います。

 それは与えられた人生と、自分で創造する人生の違いとも言えるかもしれません。人の関係も今は結果のみで動いている人は多いと思います。完璧に出来上がっている人を求めている人や、整形に走る人が多いのもそのせいだと感じます。

 香りも、自分の好き嫌いも良いのすが、まず良い香りが何であるのか理解していくほうが、自分にとってもよりよい香りが創造できてくるような気がします。良い香りに深い理解が出来れば、実際の自然にも、もっと深い感情が持てるような気もします。

 今の時代は、人の関係でもなかなか好きになることが出来ないのはそういった理由もあるようです。香りの世界はとくに出来上がったものに囲まれていることは、良いことは何もないような気がします。
by fenice2 | 2010-12-17 21:37 | アロマ 香り
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