人気ブログランキング | 話題のタグを見る
<< 現代悪魔学ーモレクと子供の生贄 薔薇の香りと共に >>

彷徨う時代ー虚しさと時間(或るアナウンサーの自殺について)

彷徨う時代ー虚しさと時間(或るアナウンサーの自殺について)_f0149554_18332794.jpg


先日、報道されている川田亜子アナウンサーの自殺について、何故か僕に文春より取材を申し込まれました。何故僕にきたのかということを聞けば、何でも前日に香りを仕事にしている方と彼女が会っているということでした。

 僕は、その女性の方をあまり深くは知りませんでしたが、調べてみると或る香りの協会では活躍されている方のようでしたが、残念ながらこの方は香りをつくる方ではないようでした。

 少しはつくられるようでしたが、基本的にはアドバイザーという仕事だったらしく、最近になって香りで相談みたいなことをされていたようですが、その自殺した川田さんとはそれほど深い間柄ではなかったようです。

 しかし、いずれにしても今回のことで香りに関わる人間と接していながら、こういう不幸な出来事が起こってしまったことは、どうも他人事では済まされなくなる思いがしました。彼女は最後に香りに助けというか、救いのようなものを求めてきていたとしたら、どうだったのだろうかと、当事者ではありませんので、安易にコメントはしたくはないのですが、それにしても自分自身にも歯痒い思いをしました。

 有名人になると、傍目でみているほど楽しくことばかりではなく、特に身内や親友と呼べる人との関係が難しくなると、活躍すればそれだけ孤独に陥ってしまうような気がしていますが、そういうことは考えてみれば、現代では、何も有名人に限ったことではなくなっているのかもしれません。

 その方は、彼女が自殺する前日にお会いになっていたということで、昨日もテレビに出ていましたし、当分は関心を持って見られるかと思いますが、僕ならおそらく落ち込んでしまって、暫くは仕事を離れようと思ってしまうかもしれませんが、いずれにしても今後はさらにそういう心や内面とも関係して、香りに関わっていって欲しいと思っています。

 インタビューを受けた方の中では、まだ綺麗なのにもったいないという人もいました。人も羨む世界の中で、彼女にとってそういう価値観も最後は心の虚しさと比べれば、無になってしまったのだろうと思います。

 しかし、僕自身もそうでしたし、相談に来られる方や、香りの勉強をされている方にもそういう虚しさから抜け出したかったというお声はよく聞きます。心が真っ暗になり、何もかも塞ぎこんだ中で、人間でも最期は嗅覚に頼って進むことがあるように思います。

 最悪の状態を作り出すのも、人間の心なら、そこから脱出することのイメージをつくることが出来るのも人間の心だと思います。

 音楽でも、絵や写真もよいと思いますが、心にとってイメージは大切ですが、そのイメージをつくることを繰り返し行っていないと、そういう土壇場の時期になって、なかなか心に描くことは出来ないようです。

 香りもそうですが、上手くつくることばかりに心が奪われてしまうと、そういうイメージみたいなものが心に描けなくなって、やがて良くないつくり手になってしまいます。

 心にないものばかりをつくったり、追っていると虚しくなるのは当然だと思います。また、クリエーティブな人間がそういう虚しさに触れてしまうと、多くの人の気持ちを巻き込むので、さらに堕落した心や社会を作り出してしまいます。

 川田さんのために、香りを調香してみましたが、とても深い森をイメージするものになっていきました。人間社会から離れて、アマゾンなど何処か深い自然の中に身をおきたかったのかもしれません。

 彼女の魂は、今頃そういう場所で休んでいるのかもしれません。心からご冥福をお祈りしたいと思います。


 上の絵はユニコーンですが、そういう深い森に迷い込んだ魂を救ってくれるのが役割だそうです。何時かは彼女の元にもこのユニコーンがおとずれてくるかと思います。
by fenice2 | 2008-05-27 19:35 | 調香・錬金術
<< 現代悪魔学ーモレクと子供の生贄 薔薇の香りと共に >>