10代の後半に、三島由紀夫にとりつかれて某作家の弟子になり、それから自分では気づかぬうちに美学の道に入り込んでいきましたが、毎日、毎日を自分の醜い部分を責めて、世の中の汚さを憎んでいました。 純粋であったかどうか解りませんが、美のためなら何時でも死ぬことが出来ると思っていましたので、今よりもずっと危険な美学を持っていたのは事実だと思います。 考えてみるとその頃から、今までそれほど大きな違いはないと思っていますが、唯一違っているのは天使や妖精について、単に美しいだけでなくて、甘美なものとは思わなくなったことだと思います。 生きていくことにそれほど夢もなく、何もかも満たされた生活であったのですが、自ら美しいものを作り出せないことに、どうしようもないぐらいのコンプレックスを持っていました。周囲は、それでも僕が、色々な芸術的なことが出来るとみていましたが、全く自分の中では不満でした。 何故、大人の仲間入りをする前に、あれほど美学にとりつかれてしまったのか解りませんが、佐賀藩の葉隠などを読んでは、切腹のやり方などを研究していました。 生き方としては、偽善がもっとも嫌いで、次にエゴを軽蔑していました。太宰は、小説は女々しいのですが、思想家としてはもっとも説得力のある人間だと考えていました。 確かに美しいものは、瞬間に命がありますが、僕は大人になりきる前に死ぬことが美しい生き方だと思っていたのかもしれません。自分で馬鹿馬鹿しいほど、自分を持ち上げるならこれから大人になっていって、身も心も汚れていきたくはないと思っていたのかもしれません。 それから、何とか死なずに以前にも書いた通りハードな経験をしていったのですが、考えてみるとそのことで自分の魂や心が汚れていったのかどうかはわかりません。 また、自分自身でも金融関係や感覚のど真ん中に立たされて、穢されてしまったと思っていたわけではなかったように思います。 人がなかなか出会わない辛い経験を、色々してきてそれで自分にあった美学は、とりあえず粉々に壊れていったように思います。諸刃の剣のような感性は、次第に鈍くなって、インスピレーションや霊感みたいなものも、アバウトになっていきました。 心や見えない世界に通じる能力は、繊細で傷つきやすいために、あまりに現実世界の中に晒されてしまうと、見る影もなく収縮していってしまいます。TVに出ている霊能者と名のつく方も、人気者になっていくうちに、純粋性が失っていって、能力が衰えていくように見えています。 三島由紀夫の説によると、そういった不思議な能力や感性も含めて、高めていくのはより深くて強い美学を持つより他にはなさそうで、そのことはより高い理想や目標を持つことに似ています。 ミラノに行ったときは、自分自身の美学で生計をたてることを考えましたが、モーパッサンと交流があった人を通じて、また再び日本の文学の話になると、やはり日本が持っている精神性の深さなどが懐かしく思い、結局は外見だけは、日本人離れをしていても、中身は少し違う花が自分の心に咲いているような感覚をもちました。 結局、僕は10代の後半に美学に触れて、20年経ってからようやく、自分の精神性がそれと一致するようになりましたが、今でもあれほど美しいものに対する異常なパッションがなければ、穢れていなくても、何も作り出せない人間になっているように思います。 そういう意味では、美しいものをつくることで必要なものは、まず精神性で次にテクニックや知識がくるのではないかと思っています。僕のもとで勉強されている方は、可愛そうに皆さんこの精神性を追求されてきますが、それがしっかり出来てくれば、まるで魔法のようにとは言いいませんが、香りが出来てくる現実をみると、やはりこの指導や方法で良かったのだと思っています。 政治家もそうですが、美学さえ持っていれば、賞賛される職業もあります。しかし、こういった仕事は、残されていくものが全ての世界です。とても大変な世界ですが、世の中がどれほど変化し、破壊されていっても最期に残る世界ではないかと思っています。 美学も精神性も存在しない、アメリカの金融の世界は崩壊し、力のある方向にうつろっていくのが関の山です。占いや予想も必要ないでしょう。
by fenice2
| 2008-10-02 02:04
| 天使
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